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【第16話】幾ヶ瀬Present's愛と笑いの怨念チャンネル(15)
事務室だろうか。
スマホのライトで中を照らすと、アルミ製の机が並んでいる様子が浮かび上がった。
あまりにスマホの照明が眩しいせいもあってか、明かりの範囲外は恐ろしいまでの闇に覆われている。
有夏チャンの姿など見えやしない。
「ヒィィ……せ、潜入しますぅぅ」
うっわ、涙ぐましいな。この新人YouTuber。
幾ヶ瀬のヤツ、泣きながらも扉の縁に片足をかけたのだ。
だが、そこで固まっている。
「ほら、早く入ってくださいよ」
「わ、分かってますぅぅ……!」
どうしても入れないらしい。
扉を前に全身カタカタ振動している。
「アタシ、何でこんな夜中にこんなことを……」
いけない、我に返ってはいけない。
突然沸き起こった疑問を、アタシは頭から追い払った。
「ほら、こんな所でグズグズしてたらチャンネル登録してもらえませんよ?」
発破をかけたときのこと。
カメラ越しに幾ヶ瀬がこちらを向いたのだ。
ヒィ、怖い! 人のいない夜の学校でヘンタイと2人きりじゃねぇかと思ったら、ヤツの視線はアタシを通り越して向こう側に滑る。
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