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【第18話】こうして秘密が暴かれる(4)

 冷蔵庫にカップを並べる様は、いつもの幾ヶ瀬の態度に戻っている。 「有夏、甘いのもの好きだもんねぇ。俺、有夏のためにパティシエになろうかな」  なんて言い出す始末。  ブレッブレじゃねぇか。怪談師はどうしたんだよと有夏は肩を竦める。 「有夏のために何かにならんでいいわ。パティシエでも何でも、勝手に自分のためになれよ」 「やだ、深いっ!」 「深くねぇよ」  疲れているためか、このところの幾ヶ瀬はこんな感じで面倒なうえ、時として異様にテンションが高い。  夜中にこうやってお菓子をつくったり、ホラー映像を見たり。  レストランオーナー渾身の新メニュー・春恋シリーズによる忙しさからキテる、一連の行動である。  意外とキャパの狭い幾ヶ瀬は、こうやって煮詰まっては有夏曰く「うざいかんじ」になるのだ。  疲れているのは確かだ。放っときゃそのうち寝るだろうと、有夏は無言でゲーム機に手をのばす。  ダウンロードした懐かしのFF過去作に、彼は今夢中なのだ。  その手を幾ヶ瀬がつかんだ。 「ほら、うざい」  有夏が小さな声で呟いたのを、幾ヶ瀬は気に留めなかったようだ。

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