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【第20話】そのイタズラは正義か悪か(1)

 ──何か変だ。  太陽が地平から顔を覗かせた頃合いか。  幾ヶ瀬は無論、世間もまだ眠りから覚めないでいるこの時間。  ──何なんだ、これは。  プラザ中崎2階、端から2軒目。  シングルベッドに身体を折り曲げるようにして寝ている男は、突如襲った背筋がざわつくような違和感に飛び起きた。 「なに……あっ、あっ、あぁぁっっ!」  唇の端が切れるくらいに大きく口を開けて、迸るのは悲痛な叫びだ。  額から見る間に血の気が失せていくのが分かる。 「おは。幾ヶ瀬」  ベッドに腰をかけて彼を見下ろしているのは、これはもちろん有夏だ。  艶のある甘い声、やわらかな微笑。  彼がこの時間に起きていることは珍しい。  何かある、というのは長い付き合いの幾ヶ瀬には瞬時に分かった。

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