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【第20話】そのイタズラは正義か悪か(2)
「ぁい……ぁぃひゃ……あっ、あひゃぁぁっっ」
──あり、ありかぁ……あっ、ありかぁ(訳)。
パカッと口を開けたまま叫ぶものだから涎が垂れる。
そこに涙も混ざった。
「にゃにひてくれ……ばぁぁっっ……」
──何してくれ……ばぁぁっっ……(訳)。
そう。
目覚めるなりこれだ。
口の中に得体の知れない感触。
電流を貯めた金属が歯を掠めたような、ぞわりと総毛立つこの感覚。
そして眼前に有夏。そう、異様なくらいご機嫌な有夏。
「ぶぁああぁぁっっっ……!!」
──ぶぁああぁぁっっっ……(訳)。
もう一度悲鳴をあげてから、幾ヶ瀬は己の口の中に指を突っ込んだ。
「ぺっ!」
弾き飛ばすようにその違和感を吐き出すと、はぁはぁと息をつく。
「な、なにこれ……」
涙と涎で顔中グチャグチャだ。
ベッドの際には幾ヶ瀬の唾にまみれた銀色の球体が転がっている。
「ふふっ」
有夏が笑いを噛み殺す。
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