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【第26話】冬のあさ(2)

 言いたかったのだ。  いつか言ってやると決めていた「アホりかさん」──反応がないことにホッとする反面、少々物足りない思いも。 「まぁ無理だよな。6時に有夏が起きるわけないか」  「アホりか」と何度名前を呼ぼうが壁を向いた姿勢のまま、すやすや眠っている。  幾ヶ瀬は恋人を起こすことを諦めた。  どうせ遅くまでゲームをしていたのだろう。  それでなくとも引きこもり代表・有夏がこんな朝早くに目を覚ますはずがない。 「雪かぁ。寒いわけだよね。そういや夕べから空気が冷たくって……ねー……」  ベッドに腰かけ、有夏の髪に指を絡める。  周囲はシンと静まり返っていた。  平日の朝の慌ただしさを、雪景色が呑み込んでしまったようだ。

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