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【第29話】秘密の撮影会(9)

「じゃあ、進撃の巨人のことでも考えてみて。名シーンとか。有夏、好きでしょ?」 「うぅっ……」 「何その顔!」  表情を大きく歪めた有夏、片手で目元を覆ってしまった。 「ツラすぎる……」 「ちょっとー……」  何とも言い難い泣き笑いの表情に、幾ヶ瀬はスマホをテーブルに置いた。 「やめとこう。感情が入りすぎて気色わる……コホン。とにかく、有夏の好きな漫画からは離れようか」  こんなことならさっきのキス顔消さなきゃ良かったとブツブツ言っている。 「よし、有夏。想像してみて。隣りのクソビッチがバイキングで元を取るんだって言って、安いやつばっかり食べまくってお腹こわしたところを……いや、駄目だって、その顔! 何て底意地の悪い笑顔なの!?」

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