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【第29話】秘密の撮影会(10)

「……そんなこと思いつく幾ヶ瀬のが、よっぽと性格悪い」  それもそうだねと言いながら、なおも諦める様子のない幾ヶ瀬。  床に座り込む有夏の両脇を抱えると、ズルズルとベッドに引っ張りあげた。  そうしてから、自分は少し距離をとって中腰にカメラならぬスマホを構える。 「有夏サンの初体験はいくつの時?」 「はぁ?」 「お、いいねぇ。恥ずかしくてほっぺたが赤くなったねぇ」 「幾ヶ瀬? おま、何言って……?」 「んー、駄目だよぉ? 言わなくちゃ。初体験はいつ?」  無意味に「いいね、いいね」と言いながら幾ヶ瀬、満面の笑みである。  立て続けのシャッターの電子音に、有夏のため息が重なった。 「ねぇ、有夏のはじめては……」 「しつこいなぁ! あ、有夏のはじめては……いくせが知ってるだろが!」

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