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【第29話】秘密の撮影会(11)

 ひらり。  引きこもりの白い手が翻った。  さきほどの暴挙を思い出したか、反射的に幾ヶ瀬が身を引く。  叩かれた頬には、まだ赤みが残っていた。 「痛ぁっ!?」  幾ヶ瀬の悲鳴。  ジットリ視線の引きこもりの手は容赦ない。  今度は頬ではない。  耳を引っ張られたのだ。 「幾ヶ瀬、耳赤い」  ついと顔を寄せ囁くと、たちまちのうちに幾ヶ瀬の耳朶が花びら色に染まった。 「だ、だって……はじめてとか言うから……」  言い出したのはお前だろうが──との言葉を飲みこんで、有夏はニヤリと笑った。 「秘密の撮影会」完

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