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【第30話】独りのときのテンションたるや(4)
アパートの2階廊下に並ぶドアは4つ。
自分と有夏の部屋、それから隣りにクソビッチが住んでいる(たまに有夏に菓子をよこして餌付けしようとするから油断はできない)。
あとの1軒は多分空き家だ。
つまり、夜中といえど気をつかう必要はないということ。
手元でガチャガチャと音が鳴るのは、有夏に貰ったキーチェーンを鍵につけているからだ。
コンビニくじでダブった進撃の巨人キーチェーン(目当ての商品が出るまで金をつぎこんだらしい!)をくれたもので、幾ヶ瀬としてはさして興味もないがせっかくなので付けているのである。
派手に音を鳴らしながら鍵を差し込み、ガチャリと回す。
扉を開けるスピードが、いつもよりゆっくりだったのは、やはり疲れが出たせいか。
頭の幅より少し広めに開けたところで、一瞬動きが止まる。
のろのろとした動作で身を引くと、幾ヶ瀬は片手を額に押し当てて固まってしまった。
廊下から見れば姿勢の悪い男が家の中に顔だけ突っ込んでいる様に見えて、相当妙な体勢ではある。
「……えっ?」
──なにやってんの?
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