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【第31話】夢は売りもの(3)

 2人の距離が近いからと言うのかと思ったら、掃除が簡単だからなんて抜かしがった。 「幾ヶ瀬?」  有夏の声が低いのは、少々苛立ちがあったからかもしれない。  しかし、幾ヶ瀬に応えた様子はない。  拭き掃除を終えると、気味の悪い笑顔のままこちらを向いた。 「有夏には住みたい場所とかってある?」 「はぁ?」 「都心の高層マンション? 田舎暮らし? 庭に花とか植えて……いや、花は食べられないからいらないや。ジャガイモとか植えよう。サツマイモでもいいな」 「イモ……?」  やけに大きく出るくせに、言っていることがセコい。

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