329 / 359
【第31話】夢は売りもの(3)
2人の距離が近いからと言うのかと思ったら、掃除が簡単だからなんて抜かしがった。
「幾ヶ瀬?」
有夏の声が低いのは、少々苛立ちがあったからかもしれない。
しかし、幾ヶ瀬に応えた様子はない。
拭き掃除を終えると、気味の悪い笑顔のままこちらを向いた。
「有夏には住みたい場所とかってある?」
「はぁ?」
「都心の高層マンション? 田舎暮らし? 庭に花とか植えて……いや、花は食べられないからいらないや。ジャガイモとか植えよう。サツマイモでもいいな」
「イモ……?」
やけに大きく出るくせに、言っていることがセコい。
ともだちにシェアしよう!