330 / 359

【第31話】夢は売りもの(4)

 ここで有夏はピンときた。  幾ヶ瀬の物言いは意味深である。これは謎をふりまいて、有夏の注意を引こうとしているに違いない。 「いくせ……いや、何でもない」  言葉にするより先に考えてみる。  彼にしては珍しい行為だ。  有夏はコップを床に置いた。  喉がゴクリと音をたてる。  今さっきお茶を飲んだばかりなのに乾きを覚えるのは、ある考えに思い至ったから。 「まんしょん、にわ……ケチで金に汚くて、がめつくてセコイ幾ヶ瀬がやけに気前のいいことを言う。これはどういうことか……うそうそ、マジか!?」  臨時収入の匂いがする!

ともだちにシェアしよう!