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【第31話】夢は売りもの(5)
「まさかっ?」
有夏の視線をゆっくり受け止めて、幾ヶ瀬がおもむろに頷いてみせる。
「ついに幾ヶ瀬、徳川埋蔵金的なアレを……!?」
大仰にズルリとこけてみせてから、幾ヶ瀬は首を振る。
ずっこける、というやつだ。
ああ、幾ヶ瀬ってわりと古いタイプの人間だったなと思いつつも、有夏、そこはあえてスルー。
「有夏じゃあるまいし、俺はそんなの探したことないから! 言うならせめてビットコインとか言ってよ。投資とか」
「びっとこいん?」
「あの、つまり……いや、いいよ。説明するの面倒臭いし」
実際、投資とか全然してないしね。興味はあるんだけどね。給料以外の収入があったら安心だよね。でも、何か怖いしね……なんてブツブツ言ってる幾ヶ瀬を、有夏はジロリと睨む。
「で? なになに? 金塊的なアレをゲットしたんなら、有夏はPS5欲しいし!」
PS5! とキメ顔で叫んで、それ以降は有夏の物欲がだだ漏れに。
「50型テレビでモンハンやりたい。PSのVRも欲しい。あとは、立体起動装置が欲しい! 昔、USJで10万円で売ってたらしいし! あとは……」
ニヤついていた幾ヶ瀬の表情が、次第に引きつる。
「有夏サン、有夏サン? 俺のお金は俺のものだからね? 念のため言っとくけど、有夏のものじゃないからね? そりゃ1個くらいは何か買ってあげてもいいけど、でも違うからね。わきまえてよ?」
「……そりゃ、分かってるよ」
険悪な空気にじわりと侵食される狭い部屋。
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