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【第31話】夢は売りもの(6)
「有夏は無駄遣いが過ぎるよ? そんなに欲しいものなら自分で買いなよ?」
「うっ……」
有夏の目元が強張る。
「……これはアレか? アレなのか?」
「何がアレなの、有夏?」
「急に大金をゲットした大人は性格が変わるという現象が今、有夏の目の前で……」
「な、なにそれ……」
核心をつかれたとばかりに、幾ヶ瀬が怯む。
彼のその態度に、有夏も喉を鳴らした。
「……てか、いくらなんだよ。幾ヶ瀬?」
「や、やだな、幾らって……露骨ですよ、有夏サン?」
双方、急に声をひそめる。
このアパートはいわゆる安普請というやつで、壁が薄いことは知っている。
セックスの時は気にもしないくせに、今回ばかりは2人は囁くように顔を寄せた。
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