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【第31話】夢は売りもの(7)
「言ったら半分よこせって言うでしょ、有夏」
「言わねぇし。PS5買ってくれたらそれでいいし」
「それくらい買ってあげるよ。それなりのマンションを買って引っ越して、テレビも大きいの買おうと思ってるし。ああ、でもここ職場に近いんだよな。職住近接、最っ高! うぅん、この距離は捨てがたい……」
「そんなんいいから! いくら!?」
「言ったら有夏、半分よこせって言うでしょ」
「もぅヤだ! 何このループ!?」
幾ヶ瀬がニヤついている。
何だ、本気で言ってるわけじゃなくて、奴はこのやりとりを楽しんでいるんだと悟った有夏。
ぴーえすふぁいぶだけかってください──棒読みでもう一度言うと、満足したか。幾ヶ瀬がそっと両手を差し伸べる。
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