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【第31話】夢は売りもの(8)

 ──6。  指は六本。 「マンションとか言ってたし。えっ、まさか……ろくせんまん???」  小刻みに首を横に振る幾ヶ瀬。 「あ、ろっぴゃくまんか。でもすごいって!」  やはり幾ヶ瀬、首を振る。 「ろ・く・お・く・え・ん」 「えっ?」  言葉が脳に浸透するのに時間がかかる。 「えっ……ろくおく? 六億っっ!!? ムグッ」 「しーーーっ!」  口を塞がれて、もごもご言いながらもコクコクと頷く有夏。  覆った手の平に、物言いたげな唇がふにふにと当たる。  いつもの幾ヶ瀬ならそれだけで興奮してしまうのだが、本日のこの男、そんなことに反応しなかった。  大金を手に入れた大人は…ってやつか?

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