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【第32話】最後の攻防(2)
「もう桜も咲いてる時期なんだよ? 有夏は外に出ないから知らないかもしれないけど! いつまでも出してちゃおかしいでしょうが!」
「季節とか関係あるか! もぐりこんで寝ころんでマンガ読みながら食べるお菓子のおいしさったらないんだ! あと、何げに有夏のことディスってんじゃねぇ!」
──季節とか関係あるか! との言葉に、幾ヶ瀬が「はぁぁ?」と顔を歪めた。
「季節、関係アリアリですよ? 有夏サン?」
「まさに季節モノなんですよ? 有夏サン?」
「一年中、使うつもりですか? 有夏サン?」
「う、うるせぇ……」
この冬、たびたび起こった──いわゆるコタツ戦争がまたもや勃発したのだ。
春だから、と幾ヶ瀬は言う。
──暖房器具であるコタツはしまいましょう。
──生活にメリハリをつけましょう。
正論で武装して、コタツを片付けにかかったのだ。
部屋の中にコタツがあると、掃除がしづらいんだという本音もチラと漏れる。
対して有夏。
春とはいえ、まだ寒い日もあるんだし……と、抵抗運動を始めるに至ったわけだ。
ダラダラ生活の象徴たるコタツを奪われてたまるかという思いは、幾ヶ瀬には手に取るように伝わっているだろう。
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