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【第32話】最後の攻防(4)

 悟ったように「ムシハワカナイ」と連呼していた有夏だが、すぐに飽きたのだろう。  渦中のコタツにもぐりこんだ。 「あーあ、有夏の部屋があったら年中コタツ置くのにな。で、アレはどうだったよ、幾ヶ瀬?」 「……有夏の部屋、隣りにあるじゃない。こたつなんて置くスペースもないくらいゴミ溜めだけど」  幾ヶ瀬は時に辛辣である。  しかし拗ねるかと思った有夏が、目をキラキラ輝かせて「だから、アレ」と己を見上げる様子に、ふと表情を緩めた。 「アレって何?」  怪訝そうに首を傾げた幾ヶ瀬の前で、コタツから少しだけ出た指が四角の形を描く。 「だからアレだって! ロクオクエン! どうよ?」 「あぁ……」  幾ヶ瀬の反応は鈍い。  前回の宝くじの話を作者はまだ引きずっているのかと、うんざりした表情である。

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