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【第37話】春の嵐(2)

 取り込んだばかりのタオルを膝で踏みしめながら、有夏がにじり寄ってくる。 「姉ちゃんがくるって。有夏の部屋、今グチャグチャだ……」  またか!!  前にも同じことがあった。  完全に同じことがあったよなと思い起こす。 「今グチャグチャじゃなくて、いつもグチャグチャなんでしょ」 「うわ……」 「前に俺がきれいに掃除してあげたでしょ。何でその状態を保てないの」 「うわぁ……」  常に幾ヶ瀬家に入り浸っていて、隣りの自分の部屋に戻ることなどない有夏が、なぜ凝りもせずゴミ屋敷を拵(こしら)えてくれるのか。  説教を垂れても無駄であることは経験上、嫌というほど分かっている。 「……しょうがないな。いつ来るの?」  ため息は自分に向けてのものだ。  我ながら甘い、と。

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