400 / 431

【第37話】春の嵐(3)

 だが、有夏はケロリとした顔だ。 「もうすぐ?」なんて言ってのける。  語尾が上がっているので、これは疑問形なのだろう。 「何で俺に聞くの!? 電話してたの有夏でしょうが! もうすぐって…今日!? えっ、もうすぐ来るってこと!?」 「多分ね。なに? キャーキャー言うなよ」 「キャーキャーって何? 有夏、自分の事でしょうが!」 「幾ヶ瀬、すぐ怒るしぃ」 「いやいやいや、有夏サン? 自分の・ことで・しょうが!!」  ハァハァと息を切らしながら、幾ヶ瀬はもう一度「自分・の・せい・で・しょう・がぁぁ!」と叫んだ。  しかし言葉を区切ることで怒りを伝えようとしたって、この男に通じやしないのは分かっている。  案の定、有夏は口をとがらせて小首を傾げているだけだ。  心底、不思議そうな面をしている。

ともだちにシェアしよう!