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【第37話】春の嵐(11)

「うふふっ、そうそう。馬鹿といえば、アイツ学校に行ってないみたいじゃない」 「え、何でそれを……。あぁ、いや、ちょっとよく分からないですけど?」  ジロリと睨まれ、幾ヶ瀬はブルッと身を震わせた。  美人なだけに凄みがある。 「し、知りませんね? ちょっと……」 「うふふっ、知らない? うふっ、そんなわけねぇだろうが」  言葉を濁すと、何番目かの姉は肩をすくめて脅すような言葉をボソボソと口にした。 「い、今何とおっしゃって?」 「うふふ、いやねぇ。うふふっ」 「ひぇぇ、怖ぇぇ……」  どうやら年度末ということで自宅に成績表が送られてきたらしい。  取得単位が少なすぎると胡桃沢家内で騒ぎになり、何番目かの姉が学校に問い合わせをしたという。  大学なので出欠管理はしていないということだが、しばらく登校していないのは確かだとバレてしまったようだ。  自分が悪いわけではないのに、すっかり肝を冷やして幾ヶ瀬はとりあえず謝ることにした。

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