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【第37話】春の嵐(13)

「胡桃沢家の姉、怖ぁ……」  得体の知れぬ凄みに、幾ヶ瀬も緊張していたのだろう。  ふぅと吐く呼吸の長いこと。  ふらつく足取りで部屋に戻ると、バルコニーから有夏がこそこそ入って来る様が目の前に。 「有夏、間男みたいだよ……」 「え? まおと……なに? まお?」  ──これは確かに。本物の馬鹿だ。  いろいろ突っ込みたいことはあれど、黙って包みを差し出す。 「ちょっと名前聞きそびれたけど、毎年行ってるビーチのお土産だって」 「ヌーディストビーチ?」 「うふ……えっ、何!?」  条件反射で「うふふ」と言いかけて、幾ヶ瀬は目を見開く。 「今、何て? ヌーディ……?」 「涼華姉だろ、今の。毎年アメリカのヌーディストビーチに行ってんだよ。本当の自分に戻れるんだって」 「………………」 「なに? どした?」 「胡桃沢家……結構濃いのな」 「そぉ?」

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