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【第38話】不毛な目覚め。幾ヶ瀬は悟った。そんな朝。(4)
時刻は8時40分になろうとしていた。
自分だって洗濯機を回して、朝食の支度をしなくてはならない頃合いだ。
貴重な睡眠時間を削って、無駄な労力を費やしてしまった。
どうせ無駄に終わるんなら、自分も寝てりゃ良かった。
朝から物凄く不毛な時間を過ごした気がする。
有夏を起こす──それはまるで人生のようだと、幾ヶ瀬は思った。
すべて無駄なようでいて、とても大事なことのような気がする。
意味のないことのようで、でも必要な行為とも思えてしまえる。
よく分からないけど、懸命に取り組んでしまう。
有夏を起こす──そう、それはまるで人生のようだと、幾ヶ瀬は悟ったのだ。
「スベテガ無意味ダ。デモスベテガ素晴ラシイ……」
そう。幾ヶ瀬は悟ったのだ。
しかし呟いた幾ヶ瀬の鼻を、次の瞬間、衝撃が襲う。
「ア痛ァッ!?」
有夏の平手が顔面を掠め、幾ヶ瀬の鼻を叩いたのだ。
「痛た……。あっ、起きた?」
ベッドに上体を起こした有夏、ぼんやりと両手を振り回している。
「うーん」と、伸びでもしているつもりだろうか。
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