432 / 438

【第39話】にんげんだもの(5)

 そんな彼の眼前にヒラリと差し出されたのは白い封筒──よく見れば近くのコンビニのチケット袋だ。 「えっ、ほんとに……?」  有夏の手首の動きに合わせてペラペラと揺れることから、軽いものと分かる。  そう、紙切れ1枚が入っている程度の。  紙切れ──それは色々な想像をかきたてられる最強のアイテムだ。  紙幣かもしれない。  人類を救うアイデアのメモかもしれない。  ワクワクする物語の構想が描かれているのかも。  あるいはお母さんの買い物メモだったり、0点の答案だったりして。  使用済みティッシュということだってありうる。  宝くじの当選券も……それは当然紙切れだ。 「いやぁ、やめてっ! 有夏、やめてよっ!」  袋の中からグリーンの紙切れを取り出す有夏。  勿体ぶったように、それはそれはゆっくりと。 「いやぁぁぁ……」  掠れた悲鳴がほとばしり、幾ヶ瀬は自身の口元を両手で抑えた。

ともだちにシェアしよう!