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【第39話】にんげんだもの(6)

 にやりという有夏の表情が一瞬怪訝なものに変わったのは、幾ヶ瀬の反応が予想と違ったからに他ならない。  が、すぐに気を取り直したか、有夏の視線は手元の「紙」に落ちる。  グリーンの横長の紙は紙幣と同じくらいのサイズだ。  濃い黒のインクで印字してあるのは──いくつかの数字、それから「BIG」というアルファベット。  言わずと知れたスポーツくじである。  1等賞金6億円という夢のサッカーくじなのである。  幾ヶ瀬が息を呑む「ヒュッ」という音。 「今週のジャンプ買いに行ったとき、いっしょに買ったんだ。もう…どうしよう。もうすぐ終わりそう。最終回に向けてまっしぐらって感じ!」 「えっ、えっ、何の話? まさか有夏、この状況で漫画の話してるのっ!? 嘘でしょ、ちょっ……」 「だって、何年追ってると思ってんだよ。第1話から名作を予感して……」 「そんなのいいからぁぁ!」 「そんなの?」 「いや、知ってます。何の漫画か知らないけど名作なんですよね。知ってますぅ。とにかくその話はあとで聞くからぁぁ!」 「何のマンガか知らないのに、知ってますぅってどういうこと?」 「それは……」

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