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【第39話】にんげんだもの(7)

 わざと焦らして楽しんでいるわけではないと幾ヶ瀬は知っている。  空気を読まないのは有夏の悪いところでもあり、良いところでもあるのだ。  ひとしきり何かの漫画の最終回予想をまくし立てたのち、有夏はようやく自分の手元にある小さな袋に視線を落とした。 「なに? ああ、そうだ。コレコレ。幾ヶ瀬がよく買ってるやつ。ビッグ? 何かのくじのやつ。一回買ってみよ思って有夏も1枚買ってみたんだけど、あれ買うの難しいのな。会員ですかとかコピー機が聞いてくんの。わけ分かんなくなって何回もやり直しして。やっと変えたって思ったら、結局最後にレジに行かなきゃなんないって。コピー機で買えると思ってたしむつかしかったし! それに……」 「馬鹿がっ! そんなのいいからっ!」 「バカ……???」 「あ、いや、ごめん。つい本当のことを……あ、いやいや、じゃなくて。それ、そのチケット……」  ──当たったの?  なぜか消え入りそうな小声で、幾ヶ瀬は囁いた。

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