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【第40話】こわい☆みかん(2)

 まぁ、不満を露わにするのも無理はない。  同じ番組を1ヵ月に二度は見て、幾ヶ瀬独特の表現で感想を聞かされているわけだから。  しかも回を追うにつれて、稲川大先生は「怪談の神」から「文学・エンタメ界のダ・ヴィンチ」「二千年に一人の天才」と称されるに至り、今日はついに「人類の救世主」と表現されるに至った。  ものすごい出世である。  救世主に陶酔する幾ヶ瀬の耳には、有夏の苦情の声など届いちゃいないのだろう。 「ほぅ……ほほぅ……」と何度も息を漏らすと座布団に座った。  スッと真顔になる。 「それより思ったんだけど有夏、みかん食べ過ぎじゃない?」 「話飛ぶなぁ!」  有夏のツッコミ。  話題が稲川大先生から、まさかの「みかん」へ着地した。 「いや、だって。ほんの一瞬目を離した隙に、みかんの皮が積みあがってるから」  食器を洗っている僅かな間に、卓の真ん中にみかんの皮が積まれている現象。  幾ヶ瀬的には、このひと月ほど悩まされている怪現象である。

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