442 / 442

【第40話】こわい☆みかん(3)

「だって、おいしいんだもん」 「だもんって……」  スーパーにみかんが並び出したのは二カ月ほど前のことである。  まだまだ皮が緑色で剥きづらく、甘みよりも酸味が強かったあの頃から、すでに有夏はみかん星人と化していた。  おいしいおいしいと連呼して、家中のみかんを喰らい尽くす。  次第に皮の色がオレンジに変じ、甘みが増していくこの時期。  スーパーでは小袋はもちろん、箱売りもするようになってきた。  もちろん箱のほうが幾分お得である。  お得大好きな幾ヶ瀬は当然三キロの箱を購入した。  数日前のことだ。  しかしその箱は、すでに底が見えようとしている。  食べるスピードが早すぎるのである。  家中のみかんを食い尽くす気かと一度小言を言ったのだが、有夏に堪えた様子はない。  そもそも自分もみかんを食べながら「みかんの食べすぎだ」と言う幾ヶ瀬の言葉に、何の説得力があろうか。

ともだちにシェアしよう!