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【第40話】こわい☆みかん(11)

「幾ヶ瀬? だいじょうぶ?」  少し離れた位置から菜箸の先でつついてくる有夏に、幾ヶ瀬は晴れやかな笑顔を見せた。 「食べようよ。みかんの皮まで、何もかも!」  憑き物が落ちたような清々しい表情で、鍋に湯を沸かし始めた。 「よし。マーマレードにするぞ。早い方がいいよね」 「みかんの皮を食べる? しかもこの時間から?」  珍しくまともな反応を返す有夏だが、残念ながら幾ヶ瀬には届いちゃいない。  鼻歌を歌いながらかなり本格派のフードプロセッサーを取り出している。 「有夏がくれたビッグのお金で買っちゃった。前から欲しかったんだよね。骨まで粉砕できる超強力フードプロセッサー」  これはスイッチが入ってしまったか。  乾燥した皮はお茶にするといいね。風邪予防にもなるねと、聞かれてもいないのに説明を始めた。 「ああ、早くフードプロサッサーを使いたい。早く回したい。スイッチ入れたい。みかんの皮が粉砕されてくとこ見たい」 「みかんの皮を食べる? しかもこの時間から?」  有夏の問いかけは、今回も無視された。

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