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【第42話】お風呂をめぐるあれこれ(表)(12)

 脅かし方が徐々に雑になっていくのだが、幾ヶ瀬は律儀に反応してくれる。  有夏の腕の筋肉がプルプル痙攣するのは、笑いながらも必死で扉を押さえているからだ。  外から鍵は掛けられないものだから、できるだけ長く楽しむためには力で扉を押さえるよりほかない。 「ほら、鏡の奥にいるから! 見えるから! ほぉら!」 「やめ……はぅっ…………」  笑い転げてから、有夏は異変に気付く。  すりガラスの向こうに幾ヶ瀬のシルエットが見えないのだ。 「お、おい?」  まさか失神した?  それとも兵隊さんに連れていかれ……? 「ウソウソ。超事故物件じゃん」  言いながら扉を開けた有夏。  瞬間、悲鳴がほとばしる。  水流が顔面を直撃したのだ。  冷たさに一瞬目がくらみ、何が起こったか理解できない様子。 「ほら、有夏も! へいたいさんの血だよっ!」  言いながらシャワーを構える幾ヶ瀬。 「あ、あんなに怖がってたのに。幾ヶ瀬め、よくも……」  片手で顔を拭っている間に、全身をずぶぬれだ。 「久しぶりにお湯を浴びたら我に返ったんだよ。心霊写真なんて、どうせ有夏がやったんだ。くらえっ!」  散々脅かされた復讐を果たした故か、幾ヶ瀬の表情の晴れやかなこと。

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