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その後、暫く穏やかな談笑に加わっていたが、とうとう眠気が襲ってき始めたのでフランメに連れられてもといた部屋に戻ってきてしまった。
自室があるのだからそっちで眠る、とつっぱねたのだが全員一致でまだ発情期なのだからフランメと共にいろというので渋々と従った形である。
「一体いつからなんだ。一方的に好いていたのは。」
「アスセーナ様「二人の時くらい敬語はよせ。慣れてないのはバレバレだぞ。」ぅ、わかった。アスセーナが12の時から、です…じゃない、だ。」
「じゅうに…。」
それは…
「当時は俺、少年愛者だったのかと自分のことを疑ってめちゃくちゃ落ち込んだもんだ…。」
あぁ、自分でも思ってたのか。突っ込んでたら傷を抉るところだったとアスセーナはほっとした。
「うーん…精通したころ、か…?なぁ、フェロモンと精通って関係あるのか?」
「まだサンプル数が少ないからなんともいえないが、恐らくは。」
ふんふんと興味深げに頷いていると、フランメは次から次へと彼の父の研究について話してくれた。
アルファが優秀なのは、そもそもがオメガの気を引くためなのではないかということ。
オメガの発情期は人それぞれで、僅かながら発情中でも仕事もこなせるぐらい軽いものもいること等々…。
それらは今までオメガは最底辺だと認識していたアスセーナからは眼から鱗が落ちるような話ばかりで、彼等親子の研究の偉大さを見に染みて実感したのであった。
「…ってこんな話ばっかりじゃつまんないよな。なんか楽しくなるような話題でも、」
「そんなことない!私だって当事者だから、そんな風にオメガを差別せずに扱ってくれているというだけでもすごく…その、有難いと思う。
いや、有難う。私達のために研究を重ねてくれて。心から感謝する。」
興奮からフランメの手をとり熱く感謝を述べてしまったが、はっと気づいて距離をとろうとした…のだが。
「あぁ、これからは俺の妻のための研究にもなるんだ…。余計気合い入れて取り組まねーとな!」
と頭と腰に腕を回され抱きすくめられてしまった。彼の瞳にはじわりと涙さえ浮かんでいて、国から表彰されるまでにもたくさんの苦労があったのかもしれない、と彼の苦労を垣間見た気がした。
にしても、俺の妻とは…!そう言われると改めてこの人と番になったんだなと甘いときめきが燻ってきて、そのくすぐったさにアスセーナは胸を掻き毟りたくなってしまった。
しかしいきなり妻でいいのだろうか?どうせなら恋人期間も設けたいなとアスセーナは思った。なんせこの人には4年も片想いさせてしまったのだ。その分、きっちりと応えてやりたい気もする。
それに、アスセーナ自身も16歳の恋に恋するお年頃である。
「運命だと周囲にもバレている以上、婚約関係までは解消できないが…、その、もう少し婚姻自体は待って欲しいんだが?」
そう告げた瞬間、フランメの目が絶望の色に染まっていく。
「なんで…俺、あ、あぁ昨晩はそんなに辛かったのか?悪い、怖い思いまでさせたのなら謝るから、どうか…っ!」
「落ち着けフラー!そ、その、夫婦としての前に…あの…少しでもいいから恋人でいたい、というか…その、…ダメ?」
なんと表現すべきか自分でも分からなくて、最終的に上目遣いに頼ってみる。
「イイ…かわいい…。わかった、じゃあ発情期が引き次第デートに行こう。何が欲しいか…時間はまだまだあるから、ゆっくり考えておいてくれ。」
と言いながら押し倒してくるのだから、本当に考える時間をくれるつもりがあるのかどうか。
「なぁ、私はもう眠たいんだが?」
嘘だ。確かに疲れているからよく眠れそうではあるが、興味深い話を聞かせてもらったおかげで頭は冴えている。
「1回で済ませるから、ちょっとだけ付き合って。」
「仕方ないなぁ、もう…。」
その言葉を合図に、2人は口づけを交わし合った。手始めにバードキスから、段々と深さを増していってお互いの歯列までなぞり合う深い情熱的なキスへ…。
途中からアスセーナは施されるばかりになってしまって、フランメをもっと愛したいのに上手くいかないせいで焦れてきた。
「や、だ…っ、私からもしたいのに…!」
「年の功ってやつだ、諦めろ。それに…防戦一方で困ってる表情、かわいいからもっと見たい。」
「な……っ!」
くちゅくちゅと粘膜が触れ合う音が頭の中まで響いてくる。息を吸うのが精一杯で、とても相手の口腔を弄り返す余裕はない。防戦一方で戸惑っていたが、相手の唾液を飲み込まされることでこの攻防は一旦終戦を迎えた。
「…そういえば、歳はいくつなんだ?」
「俺?今年で29になりました。」
だいぶ歳上だろうと踏んでいたが、まさか10以上離れているとは…!アルファである以上、片想いさせてしまう前にも恋人はいただろうしそりゃあ年がどうだと言うはずだ。
(…キス、他の誰かと練習してきたのかと思うと少し腹がたつな。)
アスセーナが急に不機嫌になるから何事かと思ったが、会話の流れからだいたい見当がついてしまったのでフランメはキュンと高鳴る胸に手を当てて溜息をついた。
「あまり嫉妬されると、可愛すぎて1回じゃ済まなくなるぞ?」
「…!!し、嫉妬なんか!」
慌てて否定するところもまた可愛らしい…!
「そういう反応は俺みたいな意地の悪い男にはむしろ煽ってる様に見えるってのは、よくお勉強しておいたほうがいいですよ、お嬢様?」
覗き込んだ顔が真っ赤で余裕がなくなってきたので、再び口を塞いで甘い嬌声を直接吸い込んだ。
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