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第二章 (2/5)
エルベルトの目にはとんだ間抜けに見えているのだろう。暗殺に失敗したあげく、アルファのフェロモンに屈して犯され、終いにはこんな汚らわしい姿まで晒すとは。嘲笑われて当然だ。
今も呆れたと言わんばかりに溜息混じりの言葉を投げつけられる。
「いつまで意地を張るつもりだ? もう限界だろう。全て吐いて楽になったらどうだ」
「誰が――ぁっ、さわ、る、な!」
紐越しに裏筋を撫でられるだけで全身が焼け付くような快感に背中がしなる。震える先端から濁ったしずくがわずかに溢れるが、求めている解放感には程遠い。
「ぁ……はっ、ぁ……くっ」
欲しくたまらない刺激を追いかけようと揺れる腰を必死に抑え、奥歯が軋むほど顎に力を込めた。
「達したいなら答えろ。誰に雇われた? どの国から来た?」
「……あッ! ぁっああ」
強く握られて上下に扱かれ、腰が跳ね上がる。背骨の末端から広がる痺れは狂おしいほどの熱として腹の底で渦巻いて解放を求めるのに、与えられるのは無機質な質問だけだ。
その内容に意味がないことは理解している。エルベルトが待っているのはルカの崩落だ。
虚勢でも構わない。震える唇で薄く笑ってみせた。
「……無駄、なのが……分か、ないのか」
たとえ今にも力尽きそうになっていても、それを悟られるわけにはいかない。
エルベルトは目を眇めて手を離した。すると低く喉を鳴らし、感心したように首を傾げてルカを眺めた。
「その強がりは一体どこから沸いてくる? 主への忠誠心か? 訓練か? それとも……経験か?」
エルベルトは問いかけながらルカの右脇腹に散らばった火傷跡に触れた。
「ぁっ……」
「このような傷、拷問かそのための訓練でしか付けようがない」
不快そうに表情を歪め、エルベルトは指先で醜く引き攣れた皮膚を撫でた。
男の言う通り、拷問に耐えるすべと、どんな苦痛にも屈しない強靭な精神力を得るために、父の手によって繰り返し焼かれた跡だ。忘れ去りたいほどの辛い記憶だったが、今のこの状況に比べるとまだマシだったかもしれないと思えてくる。
「だとすれば納得もいく。お前たちオメガは本来弱い生き物だ。ゆえにアルファの加護を求める。だがお前は違う……お前のようなオメガは見たことがない」
エルベルトは悠長に話しながら、横断無尽に肌を刻む長細い窪みを一つ一つ辿る。触れられるくすぐったさはすぐに熱を持った疼きに変わり、ルカの息を乱した。痛みに耐えるのと、快楽に耐えるのとではわけが違うことを自覚させられる。
「お前の秘密は何だ? 部下のアルファには反応しなかったと聞いている。それは特別な体質か? 何かの薬か?」
答えなど期待していないようにエルベルトは話し続け、深みのある声に吸い込まれそうになる。
施される愛撫にこのまま身を任せてしまえばどうなるだろうか。欲を受け入れ快感を乞い、エルベルトの求める答えを吐いてしまえば……この痛みを凌駕するヒートの拷問は終わるのか。感じたことのないこの高ぶりから救われるのか。
ローアンがどうなろうと知ったことではない。だがランツは……。
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