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第二章 (5/5)
腰の奥は重く怠いまま、頭と心だけが雲のように軽く感じ、全てを手放したい気持ちに支配される。
そこにエルベルトの柔らかく滑らかな声が聞こえてきた。
「……誰に頼まれたんだ?」
――誰に……? 何を……?
なんのことか考えているうちに子供の顔が瞼の裏に浮かんできた。
愛しい弟の姿だ。
――ああ……。分かってるよ。
嗚咽混じりの呼吸を繰り返しながら力なく首を振った。
言えるわけがない。これだけは。死んでも。
「ここまでとはな……」
長い溜息が耳に届いた。
「んッ……!」
後孔から指を抜かれて唇をなぞられても、嫌がるほどの気力も体力も残っていない。細く身を震わせながら、焦点の合わない目でエルベルトの姿を捉えようとしたが、視界がぼやけて曖昧な輪郭しか見えなかった。なぜ彼を探してしまうのか考えることもできない。
「……お前、名前は?」
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
――なまえ……?
なぜ名前なんて聞く。
「それぐらいは答えられるだろう」
答えられるのか? どこにでもある名前だ。ランツに結びつけられることはない。
しかし……。
「正直に言えたら、これを解いてやる」
「――あぁっ!」
張り詰めたままの欲望はありえないほど敏感になり、そっと撫でられるだけで耐えきれない涙がとめどなく溢れ出た。
――もう無理だ。
もう抗えるだけの力がない。限界はとっくに超えていた。
「安心しろ、聞いているのは名前だけだ」
「……う、そ、だ、ぁっ」
そんなこと言って、一つ一つ、情報を引きずり出すつもりだ。
「嘘ではない。約束は守る」
「うッ、んっ! ぁあっ」
指をまた咥え込まされ、バラバラに蠢かされて入口の敏感な襞を掻き混ぜられる。しなった背中は張り詰めたまま戻らず、開きっぱなしの唇からは呑み込み切れない唾液が溢れる。
「あぁ、やぁっ、ぅ、うぅ」
やめてくれ、許してくれ。懇願したくてもできない。
みっともなく泣きじゃくるルカに優しく呼びかける声があった。
「お前をなんて呼べばいいのか、知りたいだけだ」
子供の頭を撫でるように亀頭を愛撫され、中の一番感じる場所を押し上げられる。またあの大波に呑まれる恐怖を前に、胸の奥で何かがはち切れる音がした。
「ああっ! はっ、ぁ……、ぅ……カぁ……ル、カ!」
「……ルカ?」
頷くこともできないほど乱れ狂っていると、もう一度呼ばれる。
名前を呼ばれるだけで快感が増幅し、腰を突き上げて浅ましくよがった。
「目を開けろ、ルカ」
言われるがままに閉じた覚えのない瞼を上げるが、止まらない涙で何も見えない。
「大丈夫だ」
まなじりに柔らかい温もりを感じる。それがエルベルトの唇だと気付いた時、中心をずっと戒めていた紐が緩められ、強烈な痺れに何もかもが飛んだ。
「――ッ、ッ……ッ!」
声にならない悲鳴を上げながら脳を焼かれるほどの快感を伴い、粗相をするように白濁が勢いなく先端から溢れ出た。気持ち良さと解放感と安堵に呑まれる中、ルカはようやく意識を手放した。
最後にまた名前を呼ばれたような気がしたが、ただの残響だったかもしれない。
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