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エピローグ (2/6)
「なら、護衛に……」
「護衛?」
「俺をあんたの護衛にしてくれ」
面食らったようにエルベルトが眉を上げる。
「なぜ?」
「それぐらいしか俺にできることがないから」
「私の番になるのは嫌か?」
「そうじゃなくて、あんたの役に立ちたいんだ」
「私はお前に何かをしてほしてくそばにいろと言ったわけではないぞ」
「それだと与えられてばかりじゃないか」
「それの何が悪い?」
駄目だ。
うまく説明できない自分がもどかしい。
「だから……ッ。俺は――俺も、あんたを愛したいんだ!」
焦るあまり、口走っていた。
エルベルトが自分を愛してくれているように、同じだけの思いの丈を返したい。
「でも俺には、あんたみたいに知識も力もないから――」
「ルカ。何か勘違いをしていないか」
「……勘違い?」
なんのことか分からず聞き返すと、エルベルトは少し考え込むように眉を寄せた。
「お前は愛されたことがないのか」
切なさの滲む声でエルベルトが呟く。
それは事実だった。エルベルトに向けられる好意を理解できなかったのは、愛情がどんなものなのか分からなかったせいもある。だが今は違う。今なら分かる。それがどれほど大きくて、尊いか。
「だから、あんたと同じように……」
そう言いかけたところで唇を塞がれた。
いきなりの出来事に心臓が跳ねて、頭の奥で警鐘が鳴る。今は軽く触れ合うだけのキスでも、肌が粟立つほどの刺激だった。
「エル、ベルトっ――」
厚い胸板を押しやるとエルベルトは離れる代わりにルカの顔を両手で固定した。
「よく聞け、ルカ。人を愛するのに何かをする必要も、役に立つ必要もない。私はお前にしてやることを返してもらいたいなどと思っていない。お前がこうやってそばにいて、私を想ってくれているだけで十分だ」
「でも――」
「お前はいつも余計なことを考え過ぎだ。お前の本心を聞かせろ。あの時の答えを」
あの時……。
そばで生きろと告げられた時はただただ嬉しくて言葉が出なかった。
今もその気持ちは変わっていない。
だがそんなわがままを言っていいのだろうか。一度ならず二度までも。
「いいから、言え」
まるで考えていることを見透かされたかのように促され、無意識にエルベルトの服を握り締めた。
「……そばに、いたい。あんたのそばに。ずっと……」
いつまでも、ずっと。
「それでいい。私が求めているのは、それだけだ」
エルベルトは満足そうに目を細め、ルカの手を引いて部屋の中に入った。
宮殿の寝室よりも広い部屋はいくつもの窓に飾られ、西日に煌々と照らされている。その中央に置かれた大きなベッドに腰掛けるとエルベルトはルカの服に手を伸ばした。
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