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夏SS (2/7)
*
『俺の……誕生日?』
身体の隅々まで愛され火照った肌に涼しい夜風を感じながら、エルベルトの腕の中でまどろんでいた時のことだった。
生まれた日なんて聞かれても、と答えに困った。
『夏頃……だったと思う』
不自然な答えにエルベルトは黙り込む。
少しずつだったが、ルカは家族や子供の頃のことを話すようになっていた。その生い立ちを知っているからこそ、エルベルトはすぐに察した。
『祝ってもらったことがないのか』
辛そうに眉を寄せる顔が月明りに照らされ、胸の奥が痛んだ。
『別に誕生日なんて気にしたこともなかった。それより、なんでそんなことを?』
こんなことで悲しんでほしくなくて、話の続きを促した。エルベルトは少し不本意そうだったが、追及せず、誕生祭が近付いていることを話した。
ローアンでも毎年、国王の誕生祭は行われていたが、ルカは当然行ったことがなかった。ここでも大掛かりな式典なんだろうな、とぼんやり考えていると、髪に触れていた手がふと動きを止めた。
『同じ日にすればいい』
何を言っているのか分からず、エルベルトの顔を見上げる。目が合うと、蒼い眸がすっと細くなり、笑みをたたえた。
『私と同じ誕生日だ。これからは一緒に祝おう』
ようやく理解して、ルカは目を見開いた。
そんなこと、できるわけがない。生まれた日が分からないから国王と同じにするなんて、勝手すぎる。民のひんしゅくを買ったらどうする。
それを諭そうとしたが、エルベルトは聞く耳を持たず、翌日には決定事項としてことを進められていた。
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