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夏SS (3/7)

   *  それからも何度か止めようとしたものの、なんだかんだと言いくるめられ、当日を迎えてしまった。  なるべく目立たないようにバルコニーの隅に身を寄せていたが、周りにいる役人の視線を集め、背後からはマルクの咳払いまで聞こえてきた。全て気付かないふりをしてやり過ごそうとしていた、が―― 「ルカ」  この男だけは無視できない。  佇んでいたバルコニーの扉まで戻ってきたエルベルトに顎に触れられ、顔を覗き込まれた。怒っているのかと思いきや、合わせた目にはいつもの優しく慈しむ色が浮かんでいた。 「人前に立つのは嫌か?」 「……そうじゃなくて、この人たちはお前を祝いに集まったんだ。俺が出ても――」  ふっとエルベルトは笑って言葉を遮った。 「それはどうかな。試してみろ」  手を差し出され、それとエルベルトの顔を交互に見た。 「試すって……」 「ほら」  しびれを切らしたように腕を掴まれ、ぐっと前に引かれた。踏みとどまることもできただろうが、エルベルトに対する信頼のほうが大きかった。  バルコニーの先端まで進み、大勢の前に姿を現した途端、広場から弾けるような歓声が一気に沸き上がった。その轟音と熱気にルカは息を呑む。  エルベルトの祝祭に自分なんかが出ても誰も喜ばない、水を差すだけだと思っていた。  だが広場の空気は冷めるどころか、一層高ぶった。

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