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第7話 約束は守ってくれ 1

 授業が終わると早々に帰るつもりだったが、またもや駿介につかまった。昨日の約束を守らせるつもりだ。  だけど眞樹の頭の中からは昨日のことが離れなかった。  冷たく言い放った春希と、弱ってすがるような謙二郎は、これからもあのままなのだろうか。  春希は春希なりに謙二郎を大事に思っているからこそ、彼から折れるとは思えなかった。  諦めなくてはいけないと思っているのに、どうしても平静を保てない。 「――、は、あ」  突かれるたびに吐息がもれた。  筒全体を擦るのではなく亀頭で押し付けるような動きをされ、ピストンの圧力で身体の中から空気が溢れているような感覚に陥る。  この前と同様、違和感や摩擦を感じないわけではなかったが、腹の奥が痒くて、そこを掻いてもらっているような、ぐずぐずと疼くような感覚があった。 「っ、ん」  四つん這いになっていたが、しだいに崩れて枕に額を押し付けた格好になってしまった。尻の弾力を利用するように勢いよく叩きつけられる、駿介の腰に揺らされる。  今日はあまり悪くないし、どことなく気持ちがいいとも言えないこともない。ずっとこのままにされていてもいいような酩酊感があった。 「ふふ、限界まで広がってる」  動きが止まって尻たぶを掴まれた。両手で力一杯広げられ、彼のものが収まった部分を眺めているらしい。  太いものに限界まで引き延ばされ、もう少しで裂けそうになっている、可哀想な場所だ。 「やめろ」  抗議は布に埋もれてくぐもってしまい届いていないようだった。無造作にぐねぐねと尻の肉をこねられる。  彼とこういう関係にならなければ、ほとんど一生しみじみと見られるようなところではない。 「やめろっての」  口を枕から外してはっきりと言うと、尻を軽くぺちっと叩かれた。痛くはないが、じわっと熱が伝わってきた。 「じゃあそろそろイっときますか。触っていいですよ」  コンドームとローションのボトルを持ってくるから、体の下にあった手のひらを差し出した。  ゴムは中身だけをもらって自分のものにつけ、ローションを手のひらに垂らしてもらう。それをそのまま自分のものを包む。動かすとぬるぬるとぬめって、腰が甘く痺れた。  まだ中で達することができず、ずっと淡い快感を中から拾うよう要求されていた。だけどさすがに最後は前で出させてくれる。そうでないと終われないからだ。  右手で掴んでいつもの自慰のように自分の好きな部分を触れると、彼はまたゆっくりと動き出した。  今度はストローク長めだったから、抜かれるときの快感がひどい。 「あ、ああ」  鼻にかかったような声が出てしまって、恥ずかしいのに止められない。  一度触れると手が勝手に動いて、根元から切っ先まで竿全体を扱きあげる。ローションのおかげで引っかかりがなく、本物の温かい肉壺に収めているような気持ちでつい腰が動いた。  そのリズムを追われて奥まで突かれる。ぴりっと痛みが走った。 「う、く」 「ああ、すみません、ちょっと深すぎました」  普段と同じならまだ時間がかかる。彼とタイミングを合わせなければイった後の苦痛が長引くから、眞樹は快感を逃がし、またゆるゆるとこすった。  ――おまえが良ければ。  脳裏に謙二郎がよぎって、即座に振り払おうとする。  だけど脳は勝手に像を結んだ。彼はきつく春希に責められて、途方に暮れたような顔で立ち尽くしていた。  彼にとって、自分たちは家族同然だったにちがいなかった。  実家とは礼儀正しく不干渉を貫き、自分たちの家に通い続けてきたのだ。同じ年の春希を眩しいものを見るように見つめ、影のように付き添い、最優先にしてきた。  それなのにすべてを残して去るよう、当の春希に言われたのだ。  ――兄貴がいらないのなら、自分が。  一瞬考えがよぎったら、ぞくっと背中が痺れて手のひらが滑った。 「っ、あ」 「もう少し、」 「でも、う、――っ」  何とか力を抜いたり入れたりしながら快感を逸らす。  やばい。腰の中のじくじくとした疼きがじわりと広がったような気がする。こんなことではいけない。こうならないようにするために、駿介と寝ると決めたのではなかったのか。  手のひらを離して何とか意識を保つ。 「なあ、まだ、かよ」  気持ちが乱れてどうにもならなくなってくる。  諦めたいのに諦められないではないか。期待させないでほしい。なあ、早く、おまえがどうにかしてくれるんだろう。  もたもたしないで、どこかに。 (一緒にやるか)  狭い庭に作った春希のためのバスケットゴールの前で、黙々とシュートをしていた謙二郎がこちらに気づいて誘ってきた。  小学生にとっては中学生はかなり大きい。兄の友人ならなおさら気安く声をかけることもできなくて、ただ遠くから見ていることしかできなかった。 (……オレはいいよ)  遠慮すると、謙二郎は強引にボールを押し付けてきた。 (いいから。こうやってやるんだ)  無愛想なりに相手をしてくれて、どきどきしながらボールを受け取った。大きな手が励ますように触れてくると、浮きたつほど嬉しかった。  だけど春希が来ると彼の意識はあっけなくそちらに向いた。  華やかで積極的で明るい兄が、いつも彼の側にいる。四歳差は埋められるはずもなく、性格もひねくれてしまって、バスケもちょっとかじっただけで辞めてしまった。  それなのに。

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