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第8話 火花と嵐 2
氷が燃えるような不思議な光り方をした目を間近に見ながら、眞樹は息を詰めた。軽く奥歯を噛んで、指が落ち着きつつあった粘膜を逆撫でる寒気に耐える。
つぷんと付け根まで入り、するすると出ていく。中の襞が押し出そうと動き、今度は腰が抜けそうな感覚がある。
息が乱れて彼の肩に額をつけて体を支えると、耳の側で笑う気配があった。
「すぐにそんなふうになるくせに、余計なこと言わないでくださいよ。ひどくしますよ」
「それは、勘弁、してくれ」
ゆっくりゆっくりまた入ってきて、指の半ばで止まる。そして今度は左手がゆるく立ち上がったものに絡んできた。
親指でそうっと刺激されると、さっきまで触られていたこともあってすぐに硬くなってくる。
「ほら、顔を上げてください。僕に見せて」
「……嫌に決まってんだろ」
「表情がわからないと、気持ちいいかどうかもわからないでしょう。早く」
おまえは嘘をついて好き放題してるんじゃないかと言外に言いかけたせいで、気分を害させてしまったのかもしれない。
執拗な要求に折れ、眞樹は肩から額を上げて彼の額に触れさせた。
「僕のこと、好きになれません?」
「――わかんねえよ。おまえのことあまり知らねえし」
「先生から聞いたことはないんですか」
「真面目で、イイコで、ちょっと危なっかしいって言ってたな」
思い出して答える。雑談の合間に話題に出たことがあった。家庭教師なんて家庭の事情に詳しくなってしまうから距離感が難しいんだよね、とも。
一瞬駿介の瞳が揺らいだ。
「でも家庭教師にできることなんて限られてるって。そりゃそうだ。入学したら付き合いが切れるんだもんな」
「弟のいる学校を勧めたくせに……」
ここにいない相手への恨み言を言い、左手を動かしてきゅっとくびれを締め付けた。湧きたつように熱が上がってきて呼気に混ざる。
自分でやるよりも上手いなんて反則だろう。
「あなたは先生の続きで僕の面倒を見てくれないんですか」
「見てるだろ、十分」
ちらっと下を見るとわずかに反応している。何とか片手で体重を支えると、彼のものを手のひらで包んでみた。
指先で根元を刺激すると、むくっと頭をもたげてくる。
「そうですよね。ヤりたいときにヤらせてくれますもんね」
気持ち良さそうに目を細めながら、眞樹のもののカリを引っかけるようにして刺激してくる。
それだけでもう腰が抜けそうなほどだ。中に入っている指は抜き差しはしないのに、かすかに動いて膨らみ始めている前立腺に振動を与えている。そこが、微妙に熱っぽい。
「そのかわり好きにならせてくれるって約束だろ」
「あなたにその気がなかったら難しいですよ。でも」
粘液の音をさせて、尿道口を親指でなぶってくる。小さく呻いて眞樹は息を止めた。
「まっ、て」
「やっぱりこっちから変わっていくしかないのかな」
「それ以上、いじんな」
「もう一回出してください。始めに一回、さっきも結構出てたからそろそろ空かな」
「もう出ねえ、よ」
「大丈夫いけますって」
熱は上がってくるけど、本当にもうおしまいのような気がする。竿からしごきあげてくるから背骨と腰のあたりに力を入れて耐える。
一回目ならここで勢いよく出てくるのに、もう全くそんな気配がない。だけど快感だけは一人前で。
「うっ、く……っ、」
ぞくぞくっと震えるのに、精液もカウパーも少しばかり滲むだけだ。不完全燃焼のような、もう十分でやめてほしいような、中途半端な状況に追い込まれて、眞樹は呼吸を再開した。
半分酸欠でくらくらする。
「んー……こんなものか。ちょっと拭いてください」
濡れた手のひらを見せてくるので、眞樹はよろよろと手を伸ばしてティッシュを取ると適当に拭ってやる。
それよりも体内に入れっぱなしの指が気になった。さっき中が痙攣して締め付けたせいで、ぐるぐると熱が渦巻いている。
びくっ、びくっとまた不規則に痺れが背筋を駆け上がってきて、体が勝手に跳ねそうになった。
「なあ、これ」
ティッシュを床に投げ、手首を掴んで抜こうとすると、抵抗される。なんか変なのが来そうだ。寒いのか暑いのかわからないような感覚になってきた。
抜いてほしい。
できればもうやめたい。
目の前には完勃ちしてるものがあり、収まる穴は用意されている。彼がこれで諦めるはずがない。だけど。
「もういいだろこれ。この微妙に動いてんのが、変な感じになるんだよ」
「へえ?」
側にある目が面白そうにきらめいた。
「じゃあなおさらやめられませんね。ゴム取って」
しぶしぶティッシュの横にあるコンドームを一つ取り出すと、歯でパッケージを切った。そのまま差し出すと中身を摘まんで引き抜き、また渡してくる。
眞樹は彼のものにくるくると被せてやった。その間にも痺れはひどくなり、背中には寒気が走ってくる。思いもよらず、腰は熱で溶けそうになっていた。
「……、入れん、のか」
声を出すと甘くかすれるのがわかる。息がまた上がってきた。やばい。体重を支え切れないで崩れそうになってくる。
それなのにじっと駿介は見上げてきた。目の中を観察され、気まずくなった。こんなとこ見るな。
「あなたが大きくしたんでしょ」
「でももういけねえのに」
「ふふふ。まあものは試しです。ローション取って」
ぬるっと指が抜ける。震える指にボトルが重く、ようよう渡すと彼は受け取り、手のひらに出してから枕元に戻した。
そのまま自分のものになすりつける。
「あなたが入れます? それとも僕がやったほうがいいですか」
「……おまえ、が」
言いながら目を見つめられる。
面白そうな、何も見逃さないような、早く食い荒らしたいような目つきに、指のなくなった襞が異物を欲しがって物欲しげにざわめいた。もしかしたら期待しているのか。少しずつ体が変わっているのだろうか。
今まで感じたことのない反応に戸惑っていると、上下を入れ替えられた。
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