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見えないもの
御厨の後について歩いて行けば、どんどんと治安の悪くなる辺りに俺は眉をひそめた。
いわゆる繁華街に足を踏み入れる御厨に、声をかけようとする。
しかしその前に前方から歩いてきた男が此方に話しかけてきた。
「真琴!学校帰りかっ?」
「うん」
派手なスーツにオールバック、見るからに堅気の人間ではない中年の男と親しげに話す御厨に面食らう。
すると次には俺に気付いた男が此方をマジマジと見遣った。
「お。なんだそのイケメンくんは」
「俺の友達!」
「はっ?」
反論する前に、男は勝手に納得したように歩き出した。
すれ違う時に匂った酒臭さに顔をしかめる。
「じゃあなー、友里 ちゃんによろしく言っといてくれー」
「はーい」
返事をすると、御厨は何事もなかったように歩き出す。
俺は慌ててその後を追い、今度こそ声をかけた。
「おい、あいつと知り合いなのか?」
「んー?知り合いっていうか、お得意様だから」
「お得意様?」
「俺んち飲み屋なんだ。小さいとこだけど」
飲み屋って、こんな治安の悪そうな繁華街でか。
そう疑問に思ったが、流石に口には出さなかった。
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