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見えないもの4
「理由って、聞いても答えないだろ」
「……」
「図星か。お前クールそうなのに意外と顔に出るのな」
「っ…!」
同じことを言ってきた優男を思い出して顔をしかめる。
実に不愉快だ。
「別にいいよ。誰にだって事情はあるだろ?それを知ったところで、俺がどうこう言うでもするわけでもないし、わざわざ知りたがりはしないって」
笑顔でそう告げられ、俺は一度口をつぐむ。
いつもヘラヘラしてただの能天気にしか見えないのに、こいつの何かが引っかかる。
ほんと、掴みきれないやつだ。
「…じゃあなんで、こんなに俺に関わろうとする?わざわざ家にまで呼んで…。お前、基本学校外で他人と関わったりしないんだろ?」
「え?んー…関わろうとか、別に深い意味はないけど。強いて言うなら…」
そこまで言って御厨の視線がこちらへ向けられる。
それに俺が身動ぎしている間に、一気に距離を詰められた。
「俺、お前に興味があるんだ!」
「……は?」
仰反る俺に、至近距離で御厨が目を輝かせている。
…ほんとにこいつ、謎だ。
顔を逸らすと、またギターが目に入った。
手入れの行き届いたそれは、不思議と此方の目を引く。
目に見えないものを信じたりはしないが、何かこのギターからは感じるものがあった。
そうして俺は無意識に口を開いていた。
「……歌」
「ん?」
「お前、歌……、歌ってただろ」
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