22 / 142
見えないもの5
尋ねれば、真琴はにこっと人懐っこそうな笑みを浮かべる。
「うん、よく歌う」
「もう一度、聞きたい」
俺は、何を言っているのか。
自分で言ったことに頭を抱えそうになる。
それでも、確かめたかった。
こいつの歌の何が、俺に興味を持たせるのか。
何が他とは違うのか、俺は知りたい。
無言で俺を見つめていた真琴は、再び笑みを浮かべる。
「うん。いいよ」
そう言って立ち上がると、立てかけられたギターを手に取った。
無意識に鼓動が速まる。
「あんま煩くすると怒られるから、ちょっとだけなー」
よっこらせと胡座をかき、ギターを構える。
ふっと自然な動作で、御厨は目蓋を閉じた。
静寂が訪れる。
静まりかえった室内。
その中で、御厨がすっと息を吸い込んだ。
瞬間、暖かなメロディに包み込まれる。
「…っ」
全身に鳥肌が立つようだった。
ギブソン特有の音色が奏でられる。
それに乗せて、つむがれる歌声。
優しく、暖かく、まるで幼子の頭を撫でるようなメロディ。
その中に感じられる、一抹の悲しさ。
こいつの音は、カラフルに色付いている。
あまりにも真っ直ぐに、心の奥底に無遠慮に踏み込んでくるものだから、此方は拒絶することすらままならない。
ともだちにシェアしよう!