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文化祭

「なぁ頼むよ真琴!」 廊下で何やら声が聞こえる。 見てはいないが、何かをせがまれている相手は御厨だろう。 2週間後に迫った文化祭。 この学校は準備期間が長く、生徒たちは放課後に早くも文化祭に向けての準備を始めていた。 俺も家に帰らなくていい口実ができたと、最後まで残り準備に参加している。 うちのクラスは定番というかなんというか、喫茶店をやるのだそうだ。 俺は裏方がよかったのだが、殆ど強制的にウェイターをやることになっている。 女子たちが「奏一くんがウェイターをやらずして喫茶店をやる意味があるか!」「奏一くんと陽介くんが揃ってこそ、私たちが理想とする喫茶店よ!」と謎の暴動を起こしかけたのだ。 なんというか、賑やかな連中である。 そんなこんなで準備中。 教室を一部レンガ壁のようにしたりするため、四角く切ったダンボール1つ1つに絵具を塗っている中、廊下で聞こえてくる声に俺は耳を傾けていた。 何故わざわざ耳を傾けているのかは、正直自分でも分からない。 こんな盗み聞き紛いのことをしている自分に若干苛ついているくらいだ。 「おい奏一、もっと丁寧に塗れよ…。手直しするの俺なんだぞ…?」 「……ッチ」 「え、なんで舌打ち…!?」 隣で陽介が何か言っているが、知ったことではない。 ポイっと塗り終えたレンガを陽介に投げつける。 受け取った陽介は、それにショボショボしながら別の色の絵具を塗り付け始めた。

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