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文化祭4
あの日からというもの、俺の逃亡劇は始まった…。
「なーるーせー!」
「ゲッ」
拒絶する俺を無理やり勧誘しまくってくる御厨。
神出鬼没で、恐ろしいスピードで追いかけてくるから堪ったものではない。
この3日間ずっと地獄のような追いかけっこを続けているから、周りも俺たちを見かけると何故か道を開けるようになっていた。
道を開ける前に、俺的にはあのバカを食い止めて欲しい。
碌に気を抜けない日々が続いている。
放課後、なんとか御厨を撒き【BLUE MOON】の扉を開ける。
ゼェゼェと息を荒げて入って来た俺に、綾人さんはきょとんとした顔で首を傾げた。
「なんだか、大変そうだね?」
「厄介な野良猫に…絡まれてた…」
「そ、それはお気の毒に」
ヨロヨロとカウンターに座る。
カフェにはテーブル席に2人の女性と、1人の男性が座っていた。
「冷たい飲み物にする?」
「…ん。アイスコーヒーで…」
疲れた。
俺もそこそこ足は速い方だが、あいつの身体能力はマジで計り知れず苦戦した。
木の上から飛び降りてきたり、塀を乗り越えてきたり、茂みから飛びかかってきたり、まさに神出鬼没。
最後は「腹が痛いから薬局で錠剤買って来い」と嘘をついて逃げて来たほどだ。
「はい、アイスコーヒー」
差し出されたそれを一口飲む。
ほろ苦さが舌に広がり、少し心が落ち着いた。
「で、何があったのさ。例の野良猫くんと」
「……」
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