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文化祭5
この人、こんなに介入してくるような人だったか…?
なんだが御厨の話となると、面白そうに話を聞いてくるのだ。
ここで誤魔化しても綾人さんがしつこいのは知っている。
俺は観念して、ブツブツと文化祭のことを話し始めた。
「ほうほう、なるほどねぇ」
話し終えると、綾人さんはニコニコと笑みを浮かべる。
楽しそうな彼にジトリと視線を向けるが、構わず綾人さんは口を開いた。
「野良猫くんもなかなか面白いことを考える」
「面白くなんてないから。こっちはいい迷惑」
「でも俺は可能性を感じるよ」
「可能性…?」
何のことを言っているのだろう。
この人は偶に訳の分からないことを言い始める。
可能性ってなんだよ。
何に対して?
御厨に対してか?
だったら俺なんて必要ないだろ…。
「見つけたー!!」
「なっ…!?」
勢いよく開かれたドア。
背後から聞こえたよく通る声。
俺は反射的に振り返り、瞠目した。
「な、なんでここが…!?」
「なんとなく!」
「野生の勘かよ!」
驚愕する俺の後ろで、綾人さんが「あっ」と声を上げる。
「もしかして、この子が野良猫くん?」
「野良猫?」
「……」
「へぇ、ふーん、そっかぁ」
またニコニコし出す綾人さんに、俺は眉を寄せた。
出口には御厨がいる。
逃げ場はない。
「成瀬!俺と歌おう!!」
そう言って満面の笑みを浮かべてくる御厨。
前後を笑みを浮かべた変人に挟まれ、俺は項垂れるしかなかった。
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