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文化祭8

『予感がする!』 その言葉が、頭の中で何度もリフレインする。 否定していた。 気付かないようにしていた。 でも俺も、きっと何かが起こる予感がしていた。 それこそこいつと出会った瞬間に、その予感はあったのだ。 だから怖くて投げ出した。 自由なのは、お前の方だ。 お前自体が、自由そのものなんだ。 なんでそんな風に…、ただ真っ直ぐに俺を見つめてくる。 すっと、息を吸い込んだ。 なんだか自分が、酷く惨めに感じてくる。 全部のものから逃げて、逃げて、逃げ続けて、最後には一体何が残るのだろう。 こんな自分が気に食わない。苛立ちさえする。 ならばいっそな事、こいつの博打に付き合うのも、悪くないのではないだろうか。 「……これっきりだ」 「え?」 「これっきり、文化祭の一度きり。どうせお前、俺が歌うまで纏わり付くんだろ…」 「うん!」 「笑顔で言うな!」 どうなるのかなんて分からない。 今度こそ押し潰されてしまうかもしれない。 こんなの博打も博打、大博打だ。 「だから、これが終わったらもう俺に関わるな!それが条件だ!いいな!?」 御厨が満面の笑みで笑う。 ほんと、何なんだ、こいつ…。 予測不能。 自由奔放。 それなのにどこか、深い悲しみを感じる。 「マジで、調子狂う…」 なんだかもう、どうにでもなれだ…。

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