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問題点5
「やっぱ奏一ってすげぇな!ホントすげぇよ!俺、こんな色見たことない!」
「色?」
「俺、お前の歌の色好きだ!すげぇ好きだ!」
「…っ」
言っている意味は分からないのに、こんな面と向かって好き好き言われると困惑する。
上手いとか、流石とか、そういう言葉は何度も言われてきた。
でもこんな風に好きだと叫ばれたのは初めてで、正直面食らう。
「俺たちが一緒に歌ったら、きっとすげぇいい色が作れる!」
「…だから、その色ってなんなんだよ」
尋ねても真琴は「スゲースゲー」とはしゃぐばかりで答えようとしない。
それにため息を漏らすと、不意に遥先輩が口を開いた。
「真琴は音の色が見えるんだって」
「え、音の色?」
「生まれつき見えるらしい。音色とか乗せられた感情とかで、それぞれ色が違うみたいだよ」
「は、はぁ…」
そんなことがあるのだろうか。
でも相手が真琴となると、一概に否定できない。
こいつってなんか、普通とは無縁のところにいる感じがするからな。
要するに変人ってことだ。
「よーし!絶対成功させよーう!」
1人盛り上がっている真琴は、そう言って「おー!」と拳を突き上げている。
つくづくよく分からないやつだと思いながら、俺は無意識に口元を緩ませていた。
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