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問題点6
「んじゃ、取り敢えず通してやるぞ」
「おう!」
練習開始から4日が経った。
間宮先輩はアドリブでガンガン演奏できる人で、その上手さには正直驚いた。
あんなボーッとばかりしてる先輩が、まさかこんな才能の持ち主だとは。
俺もなんとかベースを2人の演奏に合わせて試行錯誤し、応急処置が施されたこのオリジナル曲。
ベースとかそこまで弾いたことなかったけど、意外と指が覚えてて助かった。
ギターは持ってないからレンタルしている。
レンタル料を真琴のやつに請求するのは、あの家庭事情を知った後だとなんか気分が悪くて(俺の家は一応金だけはあるし)自分で払った。
今日初めて、この曲を真琴と歌う。
昨日はあまり眠れなかった。
大袈裟だと言われても、俺にとってはそれほどのことなのだ。
これまで音楽の授業とかでは適当に歌って流したり、サボったり、尽くスルーしてきた。
正直まともに歌えるか自信はない。
でもベースを弾いた時に思った。
案外戻ってくる時は一瞬なのだと。
だからこそ気が引けるが、ここまで来たからにはもうやるしかない。
一度決めたことを投げ出すほど、俺は落ちぶれてはいない。
「おしっ、奏一リーダー、準備完了です!」
「誰がリーダーだよ。なった覚えはねぇ」
「でも色々仕切ってくれてんの奏一じゃん?ね、遥先輩」
「うん、そうだね。奏一はリーダーって感じする」
「っ、…さ、さっさと始まるぞ」
「おう!」
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