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問題点8

こいつは、なんでいつもこうなんだ。 どこまでも真っ直ぐで、まるでこっちの考えていることが間違っているみたいに思えてくる。 「現に失敗しただろ!?俺は歌えない!こればっかりはどうにもならないんだよ!」 「ダメったらダメ。俺は奏一と歌いたい。つーか約束しただろ?今更破るとかダメ!針千本飲ますぞ!」 俺を指差しそう言い放つ真琴に、遥先輩が「わー、エグいなそれ」とけらけら笑う。 なんでこいつら、こんなに余裕そうなんだよ。 声が出ないんだぞ? 明らかに無理があるじゃないか。 「クソ…ッ」 「焦らない焦らない。ほらっ、もっと顔上げて!」 「グッ…!?」  ヘラヘラしながら思いの外強い力で顔を上げさせられ、首に痛みが走った。 間髪おかずにその頭を殴ると、真琴が「ひでぇ」と嘆く。 「…本当に、いいんだな」 「おう!」 「後悔はないな?」 「男に二言はない!」 「真琴かっこいー」 「先輩もなに人ごとみたいに言ってんすか!」 「いやー、人ごとだからねー」 ため息を漏らすと、体の力がフッと抜けた。 なんかもう、ほんと調子狂う。 「よーしじゃあもう1回練習してみよー!」 「えー、もう俺疲れたんだけど」 「遥先輩、低燃費すぎ!」 何故だか先程の苛立ちは収まっていた。 立ち上がり再びギターを手に取る。 まだ使って間もない物なのに、意外とそれはしっくりと手に馴染んだ。

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