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すごいやつ2

「…ふーん。なるほどな」 俺が話し終わるのと、陽介が全球打ち終え出てくるのはほぼ同時だった。 自販機で買っておいたスポーツ飲料を差し出す。 それを陽介は「サンキュー」と言いながら受け取って、俺の隣に腰掛けた。 「流石1年で4番を勝ち取るモンスターは違うな」 「なんだよモンスターって。俺の場合は守備でももっと貢献したいかな。あと数ヶ月で今年も終わりだし、来年には新チームで本格的に試合することになる」 「来年こそは甲子園ってか?」 「高校球児たる者、目標にするのは当然だろ」 今年はあと一歩のところで届かなかったと聞いた。 うちの高校がそんなに野球が強かったのは知らなかったが、2年にいいピッチャーがいて、更には陽介が入ったことにより、決勝まで勝ち進んだのは野球部創部以来の快挙だったらしい。 「お前は凄いな、色々と」 「……」 「…なんだよ」 「お前が人を褒めるとか、相当追い詰められてんなと思って」 「……」 不服だったが、言い返すこともできずに顔をしかめる。 そうしていると陽介はベンチに深く腰掛けた。 「奏一は凄いやつだって、俺はずっと思ってるよ」 「…は?」 「お前は俺のこと褒めてくれたけど、俺からしたら奏一の方がずっとずっと凄い」 なんだ、この誉め殺しは。 真意が読めずにたじろいでいると、陽介が此方に顔を向けた。 「言われたことをするだけなのって、簡単だと思うんだ」 「え?」 唐突にそんなことを言われきょとんとする。 陽介は更に話を続けた。 「周りに合わせて笑ったり、話したり。そうやって空気を読むのも、大切なことだとは思う」 持っているペットボトルを揺らしていた手を、陽介は止めた。 そして次には困ったような笑みを浮かべる。 「でもきっと、それだけじゃ駄目なんだ」

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