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すごいやつ3
小さい頃、仲の良かった佐久という男の子がいた。
保育園の頃に知り合って、小学校も同じ所に入学した。
しかし2年生に上がってすぐに、佐久はいじめの対象になった。
俺は変わらず佐久と一緒に遊んでいたが、はぶられることはなかった。
でも一緒に遊んでいる時、話している時、佐久だけに対して周りがクスクスと笑ったり、物を投げてきたことは何度もあった。
俺は何も言えずにいた。
ただいつもと変わらず一緒に遊ぶことしかできなかった。
俺には佐久以外にも友達がいる。
だからいつも佐久と遊んでいるわけではなかったし、どんどんと他の友達とサッカーやドッヂボールをして遊ぶことは増えていった。
そんなある時、突然佐久が教室で暴れ始めた。
クラスの男子に面白がって髪を引っ張られた時だった。
流石に止めさせようとした俺は、目の前で叫び散らす佐久の姿に全身が強張った。
普段は物静かな佐久が、まるで獣のように喚き散らし、手にはハサミを握って暴れ回っている。
それが堪らなく恐ろしかった。
「陽介くん危ない!」
女の子の声が放心していた俺の耳に届いた。
しかしその時には額に鋭い痛みが走り、崩れ落ちる。
ポタポタと床に赤い滴がいくつも落ちた。
それが血だと気付く前に、駆けつけて来た担任に抱き上げられる。
その傷は今でも額に残っている。
その傷と一緒に、俺の心にもなくなることのない傷ができた。
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