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すごいやつ5
くせのない黒髪に整った顔立ち。
今年同じクラスになった有名人の成瀬奏一が、此方を見ている。
会話したことなんてなかった。
というか誰とも仲良くしているところを見たことがない。
いつも孤立してて、どこか不思議なオーラがあるやつだった。
初め俺を睨みつけているのかと思ったが、その視線はバスケ部の友人に向けられているのだと気付く。
俺と同様呆気にとられていたそいつは、次には戸惑いながらも口を開いた。
「な、何がだよ。ウザいって俺のことか?」
「他に誰がいるんだよ。お前みたいな考えなしにものを言う馬鹿、見てて苛つく」
「はぁ!?なんだよそれッ、喧嘩売ってんのか!?」
成瀬に掴みかかろうとする友人を止めに入りながら、俺の心臓はバクバクと激しく脈打っていた。
額の傷の痛みは、いつの間にか忘れ去っていた。
「なぁ成瀬!」
放課後、さっさと教室を出ていく成瀬を慌てて追いかける。
声をかければ、相手は足を止めて訝しげな顔をしながら振り返った。
「……なに」
「あ、あのさっ。お前、怖くねぇのっ?」
「はぁ?」
更に訝しげな顔をされる。
それでも俺は、なおも話を続けた。
「自分の思ってることを言うのって、怖くねぇのっ?なんであの時、わざわざ声かけたっ?」
「なに、迷惑だったってこと?」
「あ、いや、そうじゃなくて…!ただ単純に聞きたいって言うか…その…」
こんなに歯切れが悪くなってしまうのは初めてだった。
基本誰とでも普通に話せる。
それなのに、成瀬の前になると途端に混乱してしまう。
オドオドする俺を無言で見つめていた成瀬は、次には徐に口を開いた。
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